市川由紀乃が語る「横笛物語」への想い、
    そしてファンの皆さんへのメッセージ


――最初に「横笛物語」を聴いた時の感想を。

由紀乃 弦 哲也先生には以前に「娘道成寺」を作曲していただいてるんですけど、この曲を初めて聴いた時、なぜだか身体の左半分にゾクッと衝撃みたいなものが走ったんです。それと同じで「〜道成寺」の時以上のゾクッていうのを感じました。「〜道成寺」も大好きな曲なんですけど、「横笛物語」はそれ以上に大切な作品になるような予感がします。

――それにしても難しい歌ですね。

由紀乃 そうですね。音域が広い上に、一番高い音も弦先生から「地声で歌ってほしい」ってご要望があって、レコーディングの時に歌ってみたら、声が出たものですから、それで行こう!ってことになったんです。毎回、歌うたびに、マイクを持つ前から「大丈夫かなぁ」って、とっても緊張しますし、怖いんですけど、この「横笛物語」というハードルを越えないと、次には進めないと思うので、とにかく一生懸命、取り組むだけです。

――発売前に京都に出掛けられたんですね。

由紀乃 はい。京都は以前から好きな街でしたし、この曲を出す前に実際に滝口寺を訪ねて、自分の中のイメージをよりハッキリしたものにしておきたかったんです。

――滝口寺はいかがでした?

由紀乃 想ったよりも小さなお寺で、私が訪ねた時には他にお客さまもいらっしゃらなかったので、本当に静かでした。竹林を風が抜けてくる音を聴きながら、気持ちがいつも以上に静まって行くのを感じて、どこからか横笛さんの呼び掛ける声が聞こえるような気さえしました。

――それは気のせいでしょうね…(笑)。

由紀乃 確かに気のせいだと思います(笑)。でも、なんだかそんな風に、私と横笛さんの間の距離が近づいたのを感じたんです。

――横笛と滝口入道の像に手を合わせられたから?

由紀乃 さぁ…? でも、本堂にある像に向かって、お二人の物語を心をこめて歌いますって報告したことで、私の中にそれ以前よりも強い気持ちが生まれたと思います。

――横笛はとても一途な恋に生きた人ですが、彼女のような恋愛は理解できますか?

由紀乃 共感できる部分はあります。私自身は、好きな人を追って仏門に入るまでの決意ができるかどうか、わかりませんけど、もし、それほどの恋ができたら、それは例え辛いものだったとしても、そこまで想うことのできる人に巡り会えたのは幸せだったと思えるんじゃないかという気もします。

――歌う時は横笛の心境ですか?

由紀乃 やっぱり、自分を重ねていることが多いですが、歌の世界に入り込み過ぎると、聴いて下さっている皆さんには却って伝わらなくなってしまうので、距離の取り方は気にしています。

――キャンペーンなどでの反応は?

由紀乃 お蔭様で、これまでにあまり聞くことのなかったような言葉をいただいたり、空気を感じたりすることはあります。その反応をどれだけよい方向へ膨らませていけるかが、これからの課題です。

――ところで、一昨年の10月25日から毎日続けていた「ぶろぐ」を、9月3日付けで休止しましたね。

由紀乃 はい…。当日、さいたま市で開いたコンサートで、想うような歌をうたうことができなくて、歌への自信を失いかけてしまったものですから、気持ちの整理がつくまでお休みさせていただこうと…。

――「ぶろぐ」へのファンからのコメントにもありましたが、当日は音響にかなり問題があって、誰がステージに立っても歌いづらいような環境だったと思いますが…。

由紀乃 確かに歌いにくいと感じる所もありましたけど、そういう環境に流されずによい歌をお届けするのがプロ歌手の役割だと思うんです。それからすると、自分の力不足ばかりが感じられてしまって…。

――しかし、「ぶろぐ」に関して「気持ちの整理がつくまで」ということは、そう長い間を置かずに再開されると考えていいんでしょうか?

由紀乃 はい。私自身、想っていなかったほど沢山の方が温かい言葉を寄せて下さって、心から感謝しています。「ゆっくり休んで」と言って下さる方もいらっしゃいますが、こんなに多くの方に励ましていただけるという現在の自分を考えたら、とにかく前向きに歌っていくしかないと、今は思っています。キャンペーンに出掛けて、色々な風景を眺めたり、感動したりすると、あぁ、皆さんに伝えたいって思っているので、できるだけ早いうちにまた「ぶろぐ」を再開したいです。コメントを下さった皆さん、応援して下さっている方々に、心から御礼申し上げます。改めまして、市川由紀乃をこれからもよろしくお願い致します。

取材:平成20年9月12日 聞き手・文:寧樂小夜

 

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